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民俗学【民俗学史】

 
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民俗学
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民俗学の学問としての諸特徴
民俗学史
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民俗学史


日本で民俗学といった場合、一般には日本民俗学を指すが、海外を見ると19世紀の欧米を中心として、多くの国で民俗学に相当する学問が誕生している。誕生の経緯は国ごとの政治的社会的状況や民族学(文化人類学)等との関係によって多様である上に、他の社会科学のように国際的な交流が盛んではなく各国独自の進展をしてきたこともあって、一概に民俗学の歴史を語ることはできない。

ヨーロッパの民俗学


ヨーロッパで民俗学的な関心が高まった背景には、近代化と都市化、あるいは資本主義化による急激な社会変化を前に、消えゆく伝統文化へのロマン主義的な憧憬や民族意識の高まりが存在する。

イギリス、フランス民俗学


イギリスでは1846年、トムズ(William John Thoms)が古代文化の名残や民謡を''folklore''と名付けて民俗学研究の草分けとなったが、学問の組織化としては、1878年にジョージ・ゴム(George Laurence Gomme)らがロンドンに“Folklore Society"(民俗学協会)を設立した時期を端緒とする。進化主義人類学が波及力を持っていた19世紀末のイギリスでは、民俗学も庶民の習俗に見るキリスト教以前の残存(Survival)を対象にするとともに、自民族のみならず海外植民地を関心に入れるなど、人類学との近接性が顕著にみとめられる。それは1885年に民俗学の協会が設立されたフランスも同様であり、20世紀初頭にかけてサンティーヴ(Pierre Saintyves)、エルツ(Robert Hertz)、レヴィ=ブリュル(Lucien Levi-Bruhl)、ファン・ヘネップ(Arnold van Gennep)といった学者が、近代的な民俗学・人類学研究を進めた。彼らのアプローチに異同はあるにせよ、民間伝承の起源を遡及し原始的な民族心理の究明を重視する点では概ね共通している。またエルツやレヴィ=ブリュルはマルセル・モース|モース(Marcel Mauss)やエミール・デュルケーム|デュルケーム(Emile Durkheim)などと近く、ファン・ヘネップも後にヴィクター・ターナー|ターナー(Victor Turner)へ影響を及ぼすなど、人類学や社会学と不可分の位置にあったこともフランスの民俗学研究の特徴だった。

ドイツ民俗学


一方、ヨーロッパにおいて最も盛んに研究が行われてきたドイツでは、民俗学はフォルクスクンデ(Volkskunde)と呼ばれ、フォルク(ドイツ民族/ドイツ国民)に共通する精神の発見という民族主義的な色彩が濃い学問であった。もともとドイツ語圏では哲学者のヨハン・ゴットフリート・ヘルダー|ヘルダー(Johann Gottfried Herder)や童話作家や法学者として有名なグリム兄弟らが、ドイツロマン主義やゲルマニスティック、神話学に基づく民謡や説話の民俗学的研究を行っていたが、1850年代にフォルクスクンデの名で科学的な学問体系を整えたのはハインリッヒ・リール|リール(Wilhelm Heinrich Riehl)である。工業の発展に伴う農村の疲弊を前にし、リールは社会政策的な意図も込め、伝統習俗の研究を通してドイツの統一的な民族精神を見出す点に民俗学の目的を定めた。1891年にはベルリンに民俗学協会が設立され、さらに20世紀前半には、初めて大学での民俗学ポストに就いたラウファー(Otto Lauffer)、『ドイツ民俗地図』を編集したスイスのホフマン=クライヤー(Eduard Hoffman-Kryer)、民族心理学のシュパーマー(Adolf Spamer)、上層文化/基層文化の二元理論を提出したハンス・ハウマン|ナウマン(Hans Naumann)など、多くの理論家が生まれた。しかし現行の習俗を古代との連続性(Kontinuit?t)があるものと捉え、農村生活や農民に原初のドイツ民族精神を見出す民俗学は、本質的に民族主義的な政治イデオロギーに取り込まれやすい性格を有しており、1933年以降の国家社会主義時代には国民統治および人種主義の国策学問へと取り込まれていった。多くの学者はナチズムに同調するような研究をせざるを得なかったが、少なからぬ学者が国家社会主義ドイツ労働者党|ナチス党員として積極的に政治へ関わり、プロパガンダ作成や民俗行事の創出に関わった。そのため戦後の西ドイツ民俗学界は、完全に学問としての信頼を失ったフォルクスクンデの政治性を自己批判することを原動力に、再出発を図ることになる。ミュンヘン大学ではモーザー(Hans Moser)が中心となり、民族主義との親和性の高い過去遡及型の方法を放棄し、より実証的な歴史民俗学への道を模索した。またモーザーやチュービンゲン大学のヘルマン・バウジンガー|バウジンガー(Hermann Bausinger)はフォークロリズム|フォークロリスムス(Folklorismus)の概念を提案することで、観光化された祭り・イベントや新たに創出される習俗を民俗学の対象に取り込み、変化しにくい伝統習俗のみに固執する旧い民俗学からの脱却を行った。バウジンガーは1971年、同大学の研究所からフォルクスクンデの名称を廃し、代わりに''Institut fur Empirische Kulturwissenschaft''(経験主義的文化研究所)の名を冠した。このように1970年代以降のドイツ民俗学では、戦前の清算を象徴するようにフォルクスクンデの名が消えつつあり、同時にその方法も歴史主義から文化人類学や歴史社会学など、社会科学寄りへと大きく変容しつつある。

日本民俗学


日本での民俗学は近世における国学や本草学にも源流が見られるが、本格的な研究が開始されたのは19世紀末である。一つの嚆矢となるのは坪井正五郎が東京人類学会を立ち上げた1886年であり、民族学・民俗学・自然人類学・考古学等を包含する「人類学」の研究として、「土俗」の調査が行われるようになった。一方、新渡戸稲造らと村落研究の勉強会を行っていた農商務省官僚の柳田國男は、1909年、宮崎県椎葉村で聞き書きした狩猟の話を「後狩詞記」(のちのかりのことばのき)として自費出版し、柳田民俗学の第一歩を踏み出す。1913年からは雑誌『郷土研究』を創刊するとともに、当時イギリス留学から帰国した南方熊楠にゴム編『The handbook of folklore(民俗学便覧)』を借り受け、それまで余技の道楽ととらえていた民俗学を学問として体系化する道筋をつけたのである。ヨーロッパのフォークロアやエスノロジーが、残存の概念によって古代との連続性を持った基層文化を明らかにしようとするのに対して、柳田は人々の生活向上を初期のモチベーションに、民俗学の目的は常民生活の歴史的変遷と同時代の生活文化との関係を考察することにあると考えていた。柳田が民俗学を構築しようとした意図は重層的であり、一つには庶民の生活史を看過する既存の文献史学へのアンチテーゼとして、二つには進化主義的な民族学や「土俗学」との棲み分けとして、三つには地方改良運動に代表される当時の国内文化政策への対抗言説として等、時代状況を反映したさまざまな企図がもくろまれていたとされる。1935年には柳田を中心に「民間伝承の会」が設立され、機関誌の発刊や民俗学講習会が行われた。またこの時代に柳田は概説書を精力的に執筆しており、学説史の中では学問としての組織や方法が整った1930年代半ばを民俗学の完成時期と見なすのが一般的である。1949年、「民間伝承の会」は日本民俗学会と改称され、この頃から大学にも民俗学の講座が設置されるようになった。それまでの民俗学は柳田邸で行われる木曜会や雑誌上において柳田が学徒を直接指導し、その成果が子弟を通じて全国に広まっていくという意味で、アカデミズムの枠外で展開した一種の運動体だったが、戦後の学制の中では東京教育大学や國學院大學、成城大学などにおいて専門教育が開始されることにより、現在にまで至る教育・研究の制度的枠組みが誕生した。

Quotation:Wikipedia - Article - History  License:GFDL

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